RAVEN'S FLIGHT

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[読書記録] 歌うクジラ

歌うクジラ 上歌うクジラ 上
(2010/10/21)
村上 龍

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歌うクジラ 下歌うクジラ 下
(2010/10/21)
村上 龍

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本作は珍しくSF作品。閉塞感は現代日本のキーワードの一つだと言えますが、本作品では流動性が失われ閉塞しきった管理社会が描かれています。

主人公は隔離された新出島の住民で、そこから脱出して極秘の情報が入ったデータチップを重要人物に届けようとするというストーリー。
同情や興奮や屈辱といった一般的な感情について、島にはそんな概念は無かった、質問は固く禁じられていた、といった描写があちこちに出てきて、主人公がどんな環境に生きてきたのかをうかがわせるものになっています。


本作の世界観を表現したキーワードのひとつが「文化経済効率化運動」という、「伝統や歴史や文化より効率を優先するムーブメント」。
その結果、普通の料理の変わりに、棒食とよばれるカロリーメイトみたいな食べ物が一般的になっていたり、心を揺さぶるような音楽が禁止されていたりします。
正直に言って、なんて味気ない世界なんだろうと思ってしまいます。

また、文化経済効率化運動によって敬語が使われなくなった為に、主人公が敬語を話せることで驚かれたり、移民たちが反抗の意思表示として助詞を崩して話すといった様が描写されています。(助詞が変化された日本語はちょっと読みにくかったのですが)
この、管理社会を表現するのに言葉に焦点を当てているのが興味深い点でした。人間の思考は言葉によって行われるので、その点でうなづけるものでした。

また、かつて時代の笑顔にあふれた宣伝映像に対して、「この商品やサービスを買えば誰もが笑顔を見せて幸福になれるという刷り込み意図は、害悪以外の何ものでもなかった」、
移民に対する暴動の後に「謝罪は非効率で事態を曖昧にする絶対悪」だという認識が広まった、といったあたりの描写は、今の日本に対するメッセージが強く出ていて実に著者らしいなと思います。

特に、文化経済効率化運動がどのような結果につながったのか、という部分は、果たして人間は社会や文化の全てを合理的に設計できるだろうか?、もしそれを実現したらどうなるのだろうか、という思考実験としても面白い部分でした。

このように、本作はSF的な管理社会を描くことで今の社会に対するメッセージが強く出ている作品でした。
ただ、あまりに今とかけ離れた世界を描いている為なのか、現代日本を描いた他の作品に比べてメッセージのリアリティが若干薄くなってしまったようにも思いました。
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